介護のマメ知識
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介護職が知っておきたい紙おむつの漏れない当て方と正しい選び方

介護職員にとって、おむつ交換は一日の中で最も回数の多い業務です。しかし、「きちんと当てているのに、なぜ漏れてしまうんだろう?」と疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。
尿漏れ対策には、装着方法だけでなく、使用するおむつやパッドの選び方も非常に重要です。
この記事では、現場で実践できる紙おむつやパッドの正しい選び方と漏れにくい当て方、尿漏れの原因、スキントラブルを防ぐケアのポイントなどを解説します。
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目次
紙おむつのケアの丁寧さが、“介護の質”を支えている
排泄ケアは「快適さ」と「尊厳」を守る大切なケア
排泄ケアは、利用者様にとって単なる清潔の保持だけではありません。
最もデリケートな部分に関わるものであるからこそ、その方のお気持ちや尊厳に配慮しながら、快適に過ごせるようにすることが大切です。
長年自立していた排泄を人に頼ることには羞恥心が伴い、尿漏れによる失敗は自信の喪失にもつながります。
排泄ケアは漏れたパッドの不快感を取り除くとともに、利用者様の気持ちに寄り添った配慮が求められるといえるでしょう。
正しい装着の目的は「漏れない」だけではない
紙おむつは布パンツとは異なり、ごわつきやすく、正しく装着できていないと動きにくさや不快感につながり、活動意欲を下げてしまいます。
さらにパッドを重ねたり、尿や汗によって蒸れたりすると、感染症や褥瘡といったスキントラブルの原因にもなりかねません。
特に皮膚が弱い高齢者では、装着ミスがトラブルの原因になりやすいため、正しい手順を確認しておきましょう。
また、適切な排泄ケアによって、夜間のおむつ交換回数を減らすことができれば、利用者様の睡眠の質が向上し、日中も活発に過ごせるようになります。
状況に合ったおむつの選び方と正しい当て方

ベッド上での装着手順(寝たきり)
ベッド上での装着にはテープタイプのおむつが基本です。
今回は尿漏れしにくいパッド交換の方法を手順とともに確認しましょう。
①必要物品の準備
尊厳保持のため、肌を露出している時間が最小限になるように必要物品の準備をしてから介助を始めます。新しいおむつやパッドは先に開いておき、前後の向きに2~3回引っ張ってギャザーが立ちやすい状態にしておきます。
②おむつを開く
ズボンを下ろし、おむつを開きます。
③拭き取り・洗浄とパッドの挿入
洗浄と拭き取りを行い、側臥位の状態で古いパッドを外し、新しいパッドを挿入します。この際、おむつのギャザーからはみ出ないように気をつけながら利用者様の身体の下に潜り込ませます。
④反対側の確認
反対の側臥位になっていただき、パッドの折れを伸ばして、ギャザーがしっかりと立っているかを確認します。
⑤仰臥位に戻して装着
仰臥位に戻っていただき、鼠径部のカーブに沿うようにパッドとおむつを陰部に被せます。
このとき、パッドやおむつの端ではなく、ギャザーをつまんで被せることでギャザーがしっかりと立ち、鼠径部にフィットしやすくなります。
⑥テープの固定
テープは骨盤を包むように止めます。下側のテープは斜め上向きに、上側のテープは斜め下向きに、クロスするように止めることで漏れにくく、股関節の動きも妨げません。
⑦ギャザーの最終確認
最後に太もも部分のギャザーがしっかり太ももを包んでいるか確認します。もし、ギャザーが立っていない場合は指をひっかけて立てます。
ポイントは、ギャザーをしっかりと立たせることです。これによって横漏れを防止できます。
▽ポイント
おむつごと交換する場合は、あらかじめおむつとインナーパッドを組み合わせておくとスムーズです。
男性の場合、パッドの広い面を前側に持ってくるほうが安定します。また、陰茎は下に向けておくと漏れにくいですが、場合によっては、上向きや横向きのほうが安定することもあります。
車椅子利用者の場合
車椅子のご利用者様の場合は、パンツタイプのおむつが基本となります。パッドもパンツタイプに適したものを使用します。
パンツタイプを使用する方の中には、ある程度ご自身で行える部分もあると思います。できることはご本人に行っていただくことも、尊厳を守るうえで大切です。
以下は、パッドの交換の手順となりますが、おむつごと取り替える場合は、両サイドにあるつなぎ目を裂くように引っ張ると破くことができ、簡単に外せます。
①おむつを下ろす
トイレ誘導であればトイレの手すりを使い、そうでなければベッドの柵などを使って立っていただき、ズボンとおむつを下ろします。
②拭き取り・洗浄
汚れたパッドを外し、おしりふきやおしぼりで汚れを拭き取ります。
排便などで汚れが強い場合はトイレに座ってウォシュレットや陰部洗浄を行います。
③新しいパッドを装着する
新しいパッドを前後の向きに2~3回引っ張り、ギャザーを立たせてからおむつのギャザーの内側に取り付けます。すべり止めテープがあるパッドの場合はおむつの底を広げてからセットします。
④おむつを上げる
座っている場合は立っていただき、パッドがずれていないこととおむつのギャザーが立っていることを確認しながらおむつを上げます。
⑤衣類の装着
鼠径部や太もも周りからパッドがはみ出していないか、隙間はないか、おむつのギャザーがつぶれていないかを確認し、ズボンを上げます。
▽ポイント
男性の場合、パッドの位置を前寄りに調整します。
よく漏れるのは股下と背中の部分です。鼠径部にしっかりギャザーがフィットしているか、背中に隙間ができていないか注意しましょう。
パッドの選び方と組合わせ方の基本
パッドには、テープタイプ用の吸収量の多いものとパンツタイプ用の薄型のものがあります。利用者様お一人おひとりに合った製品を選ぶことが重要です。
基本は「おむつ1枚+インナーパッド1枚」の組み合わせです。パッドを重ねて入れても吸収量が増えるどころか、かえって隙間ができて漏れる原因になります。
また、パッドは大きければ良いというものでもありません。1回の排尿量や排泄介助の頻度を考慮し、適したものを選びましょう。
認知症がありパッドを外してしまう方や、失禁の頻度が少ない方には、パッドを使わずパンツタイプ単体での使用も有効です。
吸収量・体型・時間帯に応じた製品の使い分け
成人の1回あたりの排泄量は150~300mlとされています。高齢者は尿量が少ない代わりに回数が増える傾向があり、個人差も大きいです。お一人おひとりの排泄量や体型、活動の時間帯に合わせてインナーパッドを選ぶことが大切です。
基本的な考え方は、活動量の多い日中はパンツタイプに薄型のパッド、夜間はぐっすり休めるように吸収量の多いパッドやおむつタイプを使用します。
痩せ型や太ももが細い利用者様は、鼠径部に隙間ができやすく、太ももから漏れやすいため、おむつのサイズ感やフィット性を重視して選びましょう。
紙おむつに関するトラブルとその対応

漏れた原因を判断する観察ポイント
漏れが発生した際は、「なぜ漏れたのか」をよく観察し、適切な対策につなげることが重要です。
漏れの主な原因
尿漏れが起きる原因は主に以下のものです。
・サイズ・種類の不一致
・パッド装着時の位置のずれやよれ
・移乗や体位変換によるずれ
・交換タイミングが遅い
・排泄量や排泄リズムの変化
利用者様によっては、日中よりも夜間の排泄量が多い方もいらっしゃいます。
その人そのひとに合わせてパッドや交換のタイミングを考えましょう。
観察すべきポイント
尿漏れがあった際は、以下の点をよく観察し原因を探りましょう。
・漏れた場所(前後・左右)
・パッドに吸収されていたか?オーバーフローか?
・肌や寝具の濡れ具合(隙間漏れの可能性)
・使用している製品の吸収量は適切か?
・利用者様の体動の影響は?
パッドが十分に吸収しているのに衣類まで濡れてしまっている場合は、パッドの吸収量が足りていないと考えられます。より吸収量の多いパッドを検討してみてください。
反対に、パッドにほとんど吸収されていなかった場合は、パッドのサイズではなく当て方に問題があるのかもしれません。漏れた場所から、パッドの位置を調節してみると良いでしょう。
また、パッドがまったく濡れていない時間帯があれば、その時間の排泄介助を遅らせてみることも、利用者様の快適性の向上に有効です。
紙おむつによるスキントラブルの原因と予防策
長期間おむつを使用している利用者様は、かゆみやかぶれといったスキントラブルが発生しやすくなります。原因を特定して対処しなければ、褥瘡や尿路感染症などの悪化につながるかもしれません。スキントラブルが発生する仕組みを知り、より良い排泄ケアに努めましょう。
スキントラブルが起こる理由
高齢者の皮膚は刺激に弱く、尿や便に長時間接触していると、含まれる成分が皮膚のタンパク質を分解し、皮膚炎を発症させます。
また、尿や汗によって皮膚が蒸れてふやけることで、皮膚の保護成分がはがれやすくなり、弱った皮膚に拭き取り時の摩擦刺激が加わることで、スキンテア(皮膚の裂け)や細かな傷ができやすくなります。
さらに、尿や便の接触によって皮膚のpHバランスがアルカリ性に傾くことで、菌が繁殖しやすくなるため、尿路感染症や褥瘡、さらには敗血症を発症し、重症化するリスクもあります。
これらを防ぐには、尿や便をきれいに取り除き、おむつ内が蒸れないようにすることが大切です。
スキントラブルを防ぐための基本ケア
利用者様をスキントラブルから守るために大切なことは以下の通りです。
・洗浄・保湿・保護を丁寧に行う
・優しく「押し拭き」を意識する
・蒸れないように、乾いた状態でおむつを装着する
肌が弱い利用者様には特に注意が必要です。
おむつ交換の際には皮膚状態の観察を欠かさずに行いましょう。
パッドは「重ねず使う」が基本!正しい使い方と注意点
漏れ対策としてパッドを重ねて使っていませんか?
昔の介護業界では、パッドを重ねることで吸収量が上がると考えられていましたが、実際には逆効果です。
パッドを重ねると、吸収量が上がるどころか、おむつ内に隙間ができて横漏れしやすくなり、蒸れからスキントラブルの原因にもなることがわかっています。
また、重ねることでおむつがごわつき、利用者様の動きやすさや快適さを損なうことになります。
正しい使用法は、「おむつ1枚+パッド1枚」の組み合わせです。その中で、吸収量や用途に合った製品を選ぶことが、快適な排泄ケアの第一歩になります。
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まとめ
尿漏れの防止にはパッドの当て方だけでなく、利用者様お一人おひとりの排尿量や排泄リズム、体型に合った製品を選ぶことが大切です。
丁寧な排泄ケアは利用者様のスキントラブルを防ぐとともに、尊厳を守り、快適な生活につながります。
失敗しても落ち込まず、そこから大きな学びを得て、観察と工夫を重ね、より良いケアを目指していきましょう。
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白ゆり介護メディア編集部
いかに白ゆりの魅力を伝えるかを常日頃考えている介護メディア担当です。
白ゆりの魅力と一緒に、介護職の皆さんのプラスになる知識やお悩みの解決につながる情報も発信しています。