無資格から介護職として働くには？義務化された「認知症介護基礎研修」をわかりやすく解説

無資格では介護職として働けない？入職前の資格取得は必須？

厚生労働省は2021年の介護報酬改定で「認知症介護基礎研修」の義務化を決定。3年間の猶予期間を設け、2024年4月から完全適用となりました。そのため、2024年4月からは介護保険施設や介護サービス事業所で介護職として働くためには、義務化された認知症介護基礎研修やそれ以上の研修を修了し、資格取得が必須となっています。

では無資格の場合、入職することもできないのでしょうか。次の項目で解説します。

無資格でも入職することは可能

無資格の場合でも入職自体は可能です。ただし、無資格の場合は、サポート的な役割を担うことが多くなります。

事業所によっては、無資格者のポジションとして「介護補助」や「介護助手」といった独自の職種を設けて、求人を出しているところもあります。

しかし、介護職として無資格で入職した場合は、入職後1年以内に認知症介護基礎研修を受講する必要があります。受講しなかった場合は、介護職として働くことができないため、注意が必要です。

入職した職場によっては、資格取得のための費用を会社側で負担してくれる場合もあります。受講費用の負担やタイミングなどは、職場の上司と相談し、検討しましょう。

認知症介護基礎研修を受講するまでは現場で働けないの？

無資格で入職した場合でも、介護の現場でできることがあります。

限られた業務内容ではありますが、どれも利用者様や入居者様の生活に欠かすことのできない業務です。次の項目で、無資格でもできる業務について解説します。中には有資格者の指示の下でなければ行うことができない業務もあるため、チェックしましょう。

無資格でもできる業務

1. 生活援助

生活援助とは、利用者様や入居者様の身体に直接触れずに行う業務です。利用者様が普段生活を送るために必要なサービスを提供します。具体的な業務内容として、居室やトイレなどの掃除や衣類の洗濯、シーツ交換、食事の配膳、生活に必要な買い物などが挙げられます。介護を受ける一人ひとりの生活に対しての「こだわり」はありますが、一般的に専門知識や技術は問われることが少ないため無資格でも行うことができる業務です。

2. 送迎業務

デイサービスなど、通所系サービス事業所の場合、利用者様の送り迎えを行う送迎業務が必要となります。送迎業務は、運転免許証があれば行うことができ、介護の資格が無い方でも行うことができる業務です。

しかし、車椅子を利用されている方や送迎車の乗り降りの際に介助を必要とされる方の送迎、認知症の方や転倒リスクが高い方など安全管理が一人では難しい場合、また事業所や自治体が二人体制を義務付けている場合は、資格取得者でなければ送迎業務に携わることができないとしていることがあります。

3. 身体介護（施設内のみ、有資格者の指導の限る）

身体介護とは、利用者様や入居者様の身体に直接触れてケアを行う介護です。車椅子からベッドに移る際の移乗介護や、歩行介助、食事介助や排泄、入浴介助などが身体介護にあたります。身体介護は、介護を受ける側の身体に直接触れて行うことが多く、その分、転倒や骨折などの事故を招いてしまう可能性があります。

そのため、無資格者が身体介護を行う場合、介護福祉士などの有資格者の指示が必要となります。

4. 事務作業

介護施設では来訪者の対応や、電話対応、書類の整理など、さまざまな事務作業が行われています。事務作業の場合、パソコンを使用することが多く、基本的なPCスキルを求められることもあります。また、昨今は請求などの事務作業は介護ソフトを活用することが多いため、ICTの扱いが得意な方は、その能力も活かすことができるでしょう。

また、利用者様や入居者様に関わる仕事として、レクリエーションの企画・準備などがあります。直接的なケアではありませんが、利用者様や入居者様の生活の質の向上につながる大切な使途といえます。

2024年4月から義務化の「認知症介護基礎研修」とは？

2024年4月より義務化された「認知症介護基礎研修」とは、どのような研修なのでしょうか。研修についてや、義務化された背景、対象者など詳しく解説します。

認知症介護基礎研修とは

認知症介護基礎研修は、2001年より全国で開始された「認知症介護実践者等養成事業」の中に位置づけられた介護初任者を対象とする研修です。

認知症を患った利用者様、入居者様を介護する上で必要な、基本的な知識や技術の習得を目的とした公的な研修となっています。

この研修が義務付けられた背景には、高齢者の増加や認知症患者数の増加が挙げられます。現在、日本の高齢化率は29.1％と超高齢化社会になっています。また、2040年には認知症の高齢者の6.7人に1人が認知症になると推計されています。

増加する高齢者、認知症患者に対し、適切で質の高い介護サービスを提供することも、ねらいのひとつといえるでしょう。

引用:「高齢化の状況（内閣府）」

参考:「認知症および軽度認知障害（MCI）の高齢者数と有病率の将来推計 p1」

認知症介護基礎研修の受講対象者

認知症介護基礎研修の受講が義務付けられている対象者は、福祉用具貸与及び居宅介護支援を除く、すべての介護サービス事業所で働く無資格の職員とされています。ただし、受講自体は、介護保険施設や事業所に勤める職員全員が受けることが可能です。

認知症介護基礎研修の受講が免除になるケース

介護福祉士などの特定の資格や、特定の研修課程を修了している方は受講が免除となります。

認知症介護基礎研修は、認知症ケアにおける基本的な知識や技術を学び、習得する研修です。そのため上位の資格取得済みの場合や、すでに研修を修了している場合は、認知症ケアの知識や技術をすでに身に付けているとみなされ受講免除となります。受講の免除の対象となる資格、研修は以下のようなものが挙げられます。

また、福祉系の学校や養成校で認知症に関する科目を受講している場合なども免除になるケースがあります。受講前に事前に調べましょう。

一方で、認知症サポーター養成講座などの民間資格のみの場合は、免除の対象とはならないため受講が必要となります。

認知症介護基礎研修の受講方法と費用

認知症介護基礎研修の受講方法は各自治体によって異なります。

現在主流となっているのが、受講者の研修会場までの移動時間や費用・業務負担の軽減を図るためにインターネットによる eラーニングによる受講です。他にも、会場に集まり対面で行う集合型研修、eラーニングと集合型の複合研修とさまざまです。受講前に各自治体に確認しましょう。

各受講方法ごとの所要時間や費用は以下のようになります。

【 eラーニングの場合】

【集合型研修の場合】※オンラインでの対面も含む

入職する事業所によっては、資格取得支援として受講料を負担してくれる事業所もあります。その場合、施設ごとに条件があるため、入職後に受講する場合は事前に確認しましょう。

介護職員初任者研修との違いは？

認知症介護基礎研修と比較される研修に「介護職員初任者研修（以下、初任者研修）」があります。

それぞれの違いは以下の通りです。

初任者研修の受講対象者、受講要件は特に定められておらず、介護に関わっている人、これから介護に携わる人など、さまざまな人を対象としています。

また、初任者研修を修了した人は、有資格者の指示がなくても身体介護ができるようになり、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護施設、訪問介護、デイサービスなど、働く場所の選択肢が増え、業務の幅も広がります。

認知症介護基礎研修と初任者研修、どちらを取るべきか？

認知症介護基礎研修は、費用と時間を抑えて資格を取得することができ、多くの高齢者が有する認知症疾患についての知識や技術を学ぶことができるため、介護の現場で活かすことができます。受講も1日で修了できるカリキュラムのため、無資格ですでに介護事業所で勤務している方でも、働きながらでも比較的負担が少なく受講できます。

初任者研修は、認知症介護基礎研修に比べ資格取得までに時間と費用がかかりますが、有資格者なしで身体介護を行えるようになり、就職や転職の際の選択肢を増やすことにもつながります。

自身のキャリアアップも視野に入れる場合は、認知症介護基礎研修または初任者研修の後に介護福祉士実務者研修（以下、実務者研修）、介護福祉士取得といった流れでステップアップすることになります。

介護福祉士国家試験の受験資格の一つでもある実務者研修の取得は、認知症介護基礎研修からも可能です。その場合、初任者研修から受講するよりも、取得するまでの時間がかかりますが、一度の受講で介護福祉士に近付けるというメリットがあります。

一方で、初任者研修を先に取得する場合は、改めて実務者研修を受講する必要がありますが、いくつかの科目が免除されるというメリットがあります。

それぞれのメリット・デメリットがあるので、費用面や仕事環境など、ご自身の状況に合わせてどちらを受講するか検討すると良いでしょう。

関連記事：「実務者研修を働きながら効率的に取得するには？ポイントや費用などを解説」

白ゆりグループは会社負担で認知症介護基礎研修の受講が可能

白ゆりグループでは、無資格で入社された方に、会社が費用を負担して認知症介護基礎研修の受講をしていただいています。また、初任者研修や実務者研修を受講する方は提携している資格取得学校の受講で受講費の割引制度をご用意。さらに、介護福祉士の取得を目指す方には、社内の介護福祉士受験対策講座「ドラゴン白ゆり塾」を開くなど、資格取得によるご自身のスキルアップを応援、サポートしています。

白ゆりグループの話を聞きたい、職場見学をしたい、と気になる方は、下記の公式採用サイトまたは公式LINEよりお気軽にお問い合わせください！

【 公式採用サイトはこちら】

【 公式LINE はこちら】

まとめ

介護報酬改定により、2024年4月から義務化された認知症介護基礎研修は、無資格で入職した後でも1年間の猶予期間が設けられているため、働きながら取得ができます。また、受講して働く事ができないため、できるだけ早く、忘れずに受講しましょう。

認知症介護基礎研修や初任者研修は、利用者様に質の高い介護を提供し、生活の質の向上や自立支援をサポートする上で基本となる知識や技術を学ぶことができます。

自身の現状やこれからを見通し、必要な研修を受講しスキルアップを目指しましょう。