生活相談員とは？主な職場や仕事内容、必要な資格などを解説

生活相談員とは

生活相談員は、利用者様とさまざまな関係機関をつなぐ「架け橋」のような職種です。

介護施設への入退去の手続き、関係機関との連絡調整、多職種との連携を通じて、安心して介護サービスを受けられるよう支援します。

介護職員やケアマネジャーとの業務内容の違いは、以下のとおりです。

介護職員との違い

介護職員は、食事や入浴、排泄、日常生活の介助など、直接利用者様に寄り添う仕事が中心です。

一方、生活相談員は、利用者様やご家族からの相談対応や契約、入退去の手続き、調整業務を担います。

ただし施設によっては、生活相談員が介護職員を兼任したり、介護業務をサポートしたりする場合もあります。

ケアマネジャー(介護支援専門員)との違い

ケアマネジャーは、利用者様やご家族の希望を聞き取り、適切な介護サービスを利用できるようにケアプランを作成する専門職です。

生活相談員とは、そのケアプランを実現するために、ケアマネジャーや介護職員、ご家族と連携をとりながら、質の高いケアを目指して施設内での調整や相談対応を行います。

生活相談員の働く職場

生活相談員が働く主な職場は、以下のとおりです。

• 特別養護老人ホーム（介護老人福祉施設）
• 介護老人保健施設
• ショートステイ（短期入所療養介護）
• デイサービス（通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護）
• 介護付き有料老人ホーム（特定施設入居者生活介護）

介護サービス事業所には、生活相談員の人員配置基準が定められています。

例えばデイサービスでは1人以上、特別養護老人ホームでは利用者様100人につき常勤で1名以上の配置が義務付けられています。

参照：厚生労働省　人員配置基準等 （介護人材の確保と介護現場の生産性の向上）

利用者様やご家族の相談に応じ、関係機関との連絡・調整する存在として、どの介護現場でも欠かせない職種です。

生活相談員の主な仕事内容

生活相談員の仕事は相談援助業務をはじめ多岐にわたり、働く施設によっても内容は異なります。

ここでは、主な仕事内容を紹介します。

利用者様やご家族からの相談対応

介護施設の窓口となり、利用者様やご家族の相談に応じ、施設の説明や見学対応などを行います。

具体的な業務としては、提供するサービスの内容や利用までの流れ、利用料金の説明、施設内の案内（居室やトイレ、浴室、リビングなど）です。

利用者様やご家族の不安や疑問に耳を傾け、安心してサービスを利用できるよう支援します。

入退所に関する手続きや調整

利用開始に関わる契約書の作成や入退所の手続き、日程調整などを行います。

新しく利用者様を受け入れる際は、施設内の職員と情報共有や連携を図り、スムーズにサービスが開始できるよう準備を整えます。

各関係機関との連携調整

ケアマネジャーや医療機関、地域の行政機関との連絡調整を行い、利用者様に必要なサービスをつなげる業務を担います。

また、サービス担当者会議や地域ケア会議に出席し、地域で暮らす利用者様を取り巻く環境を把握しながら、自治体と情報を共有したり、支援の方向性を話し合ったりします。

現場の介護業務のサポート

施設や状況によっては、介護職員のサポートとして介護業務に入ることもあります。

介護現場に入ることで、利用者様の状況や介護職員側の目線を把握し、一人ひとりの利用者様や現場のニーズをより深く理解できます。

その他の業務

デイサービスやショートステイで働く生活相談員は、通所介護計画書の作成や、利用者様の送迎を担当する場合もあります。

送迎業務を通じて、自宅や地域でのニーズを把握でき、利用者様の日常に寄り添うことができます。

また、地域のケアマネジャーや医療機関へ挨拶や連絡に出向くこともあり、直接顔を合わせることで、よりスムーズな連携を築くことができるでしょう。

生活相談員の1日のスケジュール

ここでは、デイサービスで働く生活相談員の1日のスケジュール例を紹介します。

デイサービスで働く生活相談員の1日
8:30	出勤・朝礼・朝の送迎
9:00	利用者様来所・持ち物チェック・健康チェック
9:30	利用者様やご家族の相談支援・サービス担当者会議・契約の手続き・見学の案内・通所介護計画書の作成・介護業務のサポート・来所者や電話対応など
12:00	昼食の配膳・食事介助
13:00	休憩
14:00	利用者様やご家族の相談支援・サービス担当者会議・契約の手続き・見学の案内・通所介護計画書の作成・介護業務のサポート・来所者や電話対応など
15:30	送迎準備・連絡帳記入・記録業務
16:00	夕方の送迎
16:30	終礼・翌日の準備・掃除・日報や書類の作成
17:30	退勤

相談援助業務のほか、関係機関との連携や連絡調整、サービス担当者会議への参加、利用者様の自宅での面接など、施設や日によって仕事内容は異なります。

生活相談員になるためには

生活相談員は、利用者様やご家族のニーズを引き出し、適切な支援を行います。

相談援助技術の知識や技術を持つ専門職のアプローチが必要であるため、資格要件が定められています。

必要な資格要件

生活相談員の資格要件は、以下のとおりです。

・社会福祉士
社会福祉に関する相談援助の専門職で、高齢者だけでなく児童や障がい者、生活困窮者など多様なハンディキャップをもつ人への相談援助を行う国家資格
ソーシャルワーカー（SW：Social Worker）とも呼ばれる

・精神保健福祉士
精神保健福祉の分野での知識や技術を持ち活躍する国家資格
精神科ソーシャルワーカー（PSW：Psychiatric Social Worker）とも呼ばれ、精神に障がいをもつ方の相談や社会復帰、就労支援のサポートなど幅広い業務を行う

・社会福祉主事任用資格
社会福祉士、精神保健福祉士とは異なり、任用資格
大学や短期大学などで、厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目を3科目以上履修して卒業した人が取得できる
参照：厚生労働省　ページ9：社会福祉主事任用資格の取得方法

自治体によっては、介護福祉士や介護支援専門員の資格で相談員業務を担える場合や、上記の資格がなくても介護施設や事業所、社会福祉施設での相談業務や介護業務の実務経験があれば、生活相談員として働ける地域もあります。
生活相談員として働く場合は、自治体の資格要件を事前に確認しましょう。

たとえば、「デイサービスセンター白ゆり新さっぽろ」の所在地である北海道札幌市では、以下の資格が要件とされています。

• 社会福祉法（昭和26年法律第45号）第19条第1項各号のいずれかに該当する者
  （社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格）
• 介護支援専門員
• 介護福祉士の資格を有する者

参照：札幌市　生活相談員の資格要件について

生活相談員に向いている人

「生活相談員の仕事に興味はあるけれど、自分に合っているか分からず、なかなか一歩踏み出せない」という方もいるかもしれません。

生活相談員に向いている人は、主に次のような人です。

コミュニケーション能力が高い人

利用者様やご家族、関係機関との電話やメールでの連絡、書類の説明、連携・調整など、生活相談員には多彩なコミュニケーション能力が求められます。

スムーズに対応するためには、相手の声や気持ちに耳を傾け、些細な表情の変化や言葉から本当のニーズを汲み取る力が必要です。

さらに、相手の状況や気持ちに寄り添いながら、専門用語を使わずに分かりやすい言葉で伝えられる人は、生活相談員に向いているでしょう。

客観的に物事を見ることができる人

相談業務を進める中で、利用者様とご家族の間で意見が異なる場合があります。

このようなときに、どちらか一方に感情移入し過ぎず、中立的な立場で客観的に状況を判断するスキルが求められます。

たとえば「ご本人は外出を望んでいるが、転倒のリスクがある」というケースでは、ご本人の希望とご家族の願いの両方を尊重することが大切です。

過去の経緯、身体状況、日々の生活を見守る職員の視点を整理して提示することで、お互いが納得できる方法を見つけられる場合もあります。

このように、客観的に物事を見ることができる人は、生活相談員として活躍できるでしょう。

チームワークを大切にする人

利用者様の受け入れには、ケアマネジャーや介護職員のほか、医師、看護師、リハビリ職、事務職など多職種間の連携が必要です。

利用者様のQOL（生活の質）の向上に向けて、チームのつながりを大切にし、協力し合える人が向いています。

生活相談員として働くメリット

生活相談員の仕事には大変な面もありますが、大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。

ここでは、生活相談員として働くメリットを紹介します。

利用者様やご家族から直接感謝の言葉を頂けることが多い

生活相談員として働く中で、利用者様やご家族のさまざまな悩みを伺います。
サービスの利用開始や適切な関係機関への連絡調整によって悩みが解消したとき、「相談に乗ってもらえて安心しました」と、直接感謝の言葉を頂く場面が多くあります。

たとえば、「一人暮らしの親の生活が不安で…でも入居先をどう探したらいいか分からない」と相談を受けたときに、制度や施設の違いをわかりやすく説明し、必要な支援につなげられた場合。

利用者様やご家族からの「ありがとう」の言葉や安心した笑顔は、この仕事をしていて良かった、と大きなやりがいを感じさせてくれるでしょう。

キャリアアップに役立つ

生活相談員は、利用者様・ご家族の対応や、ケアマネジャー・医療機関・行政など多方面との連絡・調整を行います。

また、職員の状況を見ながら稼働率を考えるなど、マネジメントスキルも身に付きやすい職種です。

将来的に管理者を目指したい方にとって、生活相談員で培ったスキルや経験は、キャリアアップにつながるでしょう。

日勤メインで生活リズムが崩れにくい

生活相談員は基本的に日勤業務が中心のため、夜勤のある介護職に比べて生活リズムが安定しやすいことがメリットです。

家庭やプライベートとの両立がしやすく、ワークライフバランスを重視したい人に向いています。

ただし、施設によっては宿直や介護職との兼務、宿泊サービスを行うデイサービスでは夜勤がある場合もあります。

まとめ

生活相談員の仕事は、人とのつながりを大切にし、不安を安心に変えることです。
施設の中で、利用者様やご家族、職員をつなぐ橋渡し役として、大切な役割を担っています。

相談対応、契約の手続き、関係機関との調整、時には介護業務をサポートするなど、幅広い業務がありますが、その一つひとつがやりがいや信頼へとつながります。

介護の経験を活かしながら、より広い視点で利用者様の暮らしを支えたい方にとって、生活相談員はステップアップできる仕事といえるでしょう。

介護職から生活相談員へのキャリアチェンジを目指している方は、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

参照：厚生労働省　job tag
参照：厚生労働省　通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護