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ヒヤリハットとは?介護現場での事例や原因、報告書の書き方のポイントなどを解説!

介護の業務に従事している人の中には、もう少しで事故が起きてしまうといった場面に遭遇し、「ヒヤリ」「ハッ」とした経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。ヒヤリハットは、日々の業務の中で事故が起きる原因を明らかにし、今後の事故防止につなげる重要な取り組みの一つです。
この記事では、ヒヤリハットの定義や目的、ヒヤリハットが起きる原因、報告書の書き方について解説いたします。どのような内容を報告すれば良いのかわからないという方のために、実際のヒヤリハットの事例もご紹介しますので、事故の防止や利用者様の安全確保のために役立てていただければ幸いです。
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介護現場でのヒヤリハットとは?
厚生労働省のリスクマネジメントマニュアル指針では、「患者に被害を及ぼすことはなかったが、日常診療の現場で、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした経験を有する事例」がヒヤリハットの定義とされています。
足を滑らせて転倒しそうになったり、内服薬を間違えそうになったりすることは、たとえ事故には至らなかったとしても一歩間違えば重大事故になっていたかもしれません。こういったヒヤリハットを発見した時、すぐに対策を実行しておくことで、介護事故の発生リスクを未然に防止することにつながります。
アメリカの損害保険会社で安全技師を務めていたハーバード・W・ハインリッヒは、1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故が潜んでおり、さらにその背後には300件ものヒヤリハットが隠れていると提唱しました。この考えは「ハインリッヒの法則」とされ、介護・医療の分野でも広く利用されています。
介護現場でのヒヤリハットが起きる原因
ヒヤリハットが起きる原因は、事故が起きる原因と同様であるとされており、3つの観点に分類できます。ヒヤリハットの防止についても、この3つの観点を意識することで原因を明確にし、適切な対策をとることが可能になります。
利用者様ご本人によるもの
転倒や転落といった事象には、利用者様自身の身体機能の低下や、発熱などによる一時的な健康状態の悪化、あるいは認知症によって危険予測ができにくいなどの理由が存在します。これまでは事故やヒヤリハットに至らなかったとしても、日々変化する利用者様の状態によっては、危険リスクが高まっている場合もあるでしょう。ヒヤリハットは、利用者様の状態の変化に気づくきっかけでもあり、サービス内容の変更にも影響を与える重要な情報源にもなります。
介護職員や介助を行うご家族様など、介護者側によるもの
日々多くの業務を行っている介護の現場では、職員の疲労による集中力、注意力の低下が事故やヒヤリを引き起こしてしまうこともあります。また、情報共有が行き届かず、新たに処方された食前薬の内服を忘れる、食事形態が変更されているのに誤って提供してしまうなどということにもつながります。
事故防止のためには、職員が無理をせず働ける仕組み作りや、情報の共有方法の模索、適切なツールの使用などを検討することも大切です。
また、ご家族様が介助を行ったことで起きてしまったヒヤリハットも含まれます。ご家族様が自ら移乗介助をしようとされていた、嚥下や咀嚼の能力の落ちた利用者様に固いおやつをあげていたということも現場では聞き及ぶことがあります。こういったリスクに関しても記録に残し、対処の必要性を検討するほうが良いでしょう。
介護環境によるもの
施設の設備や利用者様の環境が要因になることもあります。たとえば、床のマットがめくれて足が引っかかったり、脱げやすいスリッパなどで歩いていて、脱げたスリッパが引っかかることで転倒しそうになるなどです。高齢者はすり足気味で歩かれることが多く、数ミリの段差や障害物でつまづいてしまうことも多く見られます。
ほかにも、床が滑りやすかった、適切な位置に手すりがなかったなどの危険因子の発見に役立てることで、今後発生しうる事故を未然に防ぐことにつながります。
介護現場でのヒヤリハットの事例10選

ヒヤリハットは、事故には至らなかったが、もう少しで事故になっていたとされるものです。介護の現場で実際にどのような内容がヒヤリハットとして報告されているのかを、場面ごとに原因や対策を含めて紹介します。
【入浴編】
事例①シャワーの温度設定ミス
| 内容 | 入浴介助時、職員がシャワーを出すと50℃以上の熱湯が出てきた。幸い利用者様の身体にはかからなかったため事故には至らなかった。 |
| 原因 | ・前回の入浴時に熱いお湯を足すため温度設定を上げてそのままにしていた。 ・シャワーを使用する前に温度設定を確認していなかった。 |
| 対策 | ・温度設定を変更したあとは、使用後に設定を戻す。 ・お湯を使用する際は温度設定を確認してから使用する。 |
事例②濡れた床で足を滑らせる。
| 内容 | 入浴を終えて浴室から出た時、濡れた脱衣所の床で利用者様が足を滑らせて転倒しそうになった。すぐに職員が身体を支えたため、大事には至らなかった。 |
| 原因 | ・脱衣所の床が濡れていた。 ・足ふきマットを準備し忘れていた。 |
| 対策 | ・足ふきマットを忘れず設置し、利用者様の足裏の水分を取り除く。 ・入浴の前後に脱衣所の床の水分を拭き取る。 |
【トイレ編】
事例③ズボンを下ろしている途中に膝折れ
| 内容 | 車いすの利用者様のトイレ介助の際、車いすから立ち上がっていただいて、ズボンを下ろしている最中に利用者様が膝折れした。すぐに職員が支えて、なんとか便座に移っていただいたが、転倒の危険性があった。 |
| 原因 | ・利用者様の立位能力に変化があった。 ・立ち上がった時に、手すりとの位置が近く、姿勢が悪かった。 |
| 対策 | ・立位時間が短くなるようにトイレ介助の手順を見直し、一度便座に移ってから再度立ち上がっていただき、ズボンを下ろすようにする。 ・立ち上がる際の足の位置にマークをつけるなど、職員間で介助方法を統一する。 |
事例④トイレから独歩で出てくる
| 内容 | 独歩が困難な利用者様のトイレ介助時、便座に座っていただいたあとに、職員は他の利用者様の介助に向かった。その後戻ってくると、便座に座っていたはずの利用者様がよろめきながら歩いてトイレから出てこられていた。もしかすると転倒していたかもしれなかった。 |
| 原因 | 便座に座った状態の利用者様から目を離してしまった。 |
| 対策 | トイレ介助が終わるまでそばを離れない。 |
【服薬編】
事例⑤薬間違い
| 内容 | 薬ケースから内服薬を取って利用者様の元に行き、薬包紙を開けた。その時に他の職員から別の利用者様の薬であるとの指摘を受けた。 |
| 原因 | 薬包紙に記載されている名前の確認を怠った。 |
| 対策 | 薬ケースから取り出す時、薬包紙を開ける時には、名前を読み上げて確認する。 |
事例⑥落薬
| 内容 | 薬包紙を開け、錠剤を利用者様の手の平に乗せた際に、転がって落ちた。落ちたのが見えたため、周辺を捜索すると、イスの上に落ちていたのを発見した。 |
| 原因 | ・錠剤の数が多く、手の平に乗せた時に錠剤同士がぶつかって弾かれた。 ・丸い形状のカプセルは弾かれやすく転がりやすい。 |
| 対策 | ・錠剤が多い場合は2〜3回に分けて内服する。 ・転がりやすいカプセルなどがある場合は、内服用の小さいカップなどを使用する。 |
【移乗・移動編】
事例⑦フットレスト(フットサポート)から足が降りていて引っかかる
| 内容 | 車いすの利用者様の誘導時、短い距離だからとフットレストに足を乗せずに車いすを押していた。利用者様には「足を上げておいてくださいね」と声をかけていたが、途中で降ろしてしまい、足が床に突っかかって車いすから落ちそうになった。慌てて身体を支えたため、転落には至らなかった。 |
| 原因 | ・短い距離のため、フットレストに足を乗せなくても大丈夫と判断してしまった。 ・利用者様の認知機能や身体機能の低下があり、職員が想定していた行動にならなかった。 |
| 対策 | 短い距離でもフットレストに足を乗せる。 |
事例⑧移乗ミス
| 内容 | 利用者様をベッドから車いすに全介助で移乗しようとしたら、車いすのブレーキがかかっておらず、車いすが後方へ動いてしまった。職員は利用者様を抱えていたが、無理やり身体をひねって利用者様にもう一度ベッドに戻っていただいた。 |
| 原因 | 移乗前に車いすのブレーキがかかっているのを確認していなかった。 |
| 対策 | 移乗を行う際は、車いすのブレーキがかかっていること、跳ね上げ式の手すりの場合は跳ね上げていること、フットレストが邪魔にならない位置になっていることなどの安全管理を確認してから行う。 |
【食事編】
事例⑨提供間違い
| 内容 | 食事提供時、誤って他の利用者様の食事を提供してしまった。利用者様が箸をつける前に気づき、すぐに提供し直した。 |
| 原因 | ・お膳の上にあるネームプレートの確認を適切に行えていなかった。 ・忙しい食事時間のため慌てていた。 |
| 対策 | ・食事の提供時はネームプレートを読み上げて確認する。 ・業務が集中している忙しい時間帯は業務を分散するなどして、慌てないような仕組みを検討する。 |
事例⑩異食
| 内容 | 掲示物に使用していた小さい磁石を、利用者様が口に入れようとされていた。 |
| 原因 | マグネットが小さく口に入れやすい大きさだった。 |
| 対策 | ・マグネットを口に入らないサイズのものに変更する。 ・丸い形状のマグネットから棒状のものへ変更する。 |
ヒヤリハット報告書を書く目的
事故を未然に防ぐためには、単なる記録としてではなく、報告書としてまとめておくことで、あとから利用しやすくなります。ヒヤリハット報告書を書く目的は以下の理由が考えられます。
・介護事故防止・利用者様の安全確保
・職員間の情報共有
・適切な介護の提供の証明
これらの目的のため、提出されたヒヤリハット報告書はいつでもすぐに確認できるようにしておくことが大切です。
介護事故防止・利用者様の安全確保
ヒヤリハット報告書には、内容、原因、対策の3点を必ず記載します。ヒヤリハットが起きた原因を明らかにすることで、今後起こる可能性のある事故の予見ができます。さらに事前に適切な対策を講じることで、事故を防ぎ、利用者様の安全確保につなげることが可能です。
また、ヒヤリハット対策を続ける中で得られたリスク管理のノウハウは、他の利用者様に対しても応用できることが多いものです。例えば、情報共有のミスや安全確認不足、施設の設備不良などは、対象となった利用者様以外においても事故の要因になります。
ヒヤリハット報告と改善のための対策を積み重ねることで、さらに多くの事故を未然に防ぐことも可能になり、安全で安心な施設運営を維持できるようになるでしょう。
職員間の情報共有
多くの施設・事業所では、ヒヤリハット報告書を事故報告書とともに専用のファイルで管理し、業務前に短い時間で内容を把握できるようにしています。ヒヤリハット報告書には、必要な情報はすべて記録されながらも、内容、原因、対策が簡潔に記載されています。しかし、せっかく対策を考えても、職員間で共有できなければ同じ内容の事故が起きてしまうかもしれません。
また、ヒヤリハット報告に目を通す習慣をつけることで、職員の安全性への意識をさらに高めることにもつながります。
ヒヤリハットを報告書としてまとめておくことで、誰でも簡単に閲覧でき、短時間での理解が可能になるとともに、施設全体の安全性への意識を一層高めることで、利用者様の安全な生活環境を実現できることでしょう。
適切な介護の提供の証明
万が一事故が起きてしまった場合でも、これまでどのようなヒヤリハットが発生し、対策を講じてきたかを証明することで、日々の事故防止への取り組みに理解を得ることができます。
しかし、記録として残っているのに何の対策もとっていなかったとなれば、ご家族様は施設への不信感を募らせることでしょう。事故を完全にゼロにすることはできないかもしれませんが、対策を考えて実行している、施設として尽力していることが伝われば、家族様も必要以上に施設を責めることも少なくなるのではないでしょうか。
大切な父母を預けている方々にとって、施設の対応の良し悪しはとても関心が深いものです。たとえ事故が起きたとしても、ご家族様との良好な信頼関係を築いていくために、ヒヤリハット報告と対策の強化は続けていく必要があります。
ヒヤリハット報告書の書き方のポイント
ヒヤリハット報告書は、誰が見ても分かりやすく記載されていることが大切です。そのためにはいくつかのポイントがあります。
・簡潔でわかりやすい文章で書く
・ありのままの事実を元にする
・専門用語は使わない
・必ず対策をとる
簡潔でわかりやすい文章で書く
忙しい業務の中では必要以上に長い文章や読みにくい文章は好まれません。また、読み手が誤解しやすいような書き方をしてしまうと、情報の共有が困難になります。
反対に、簡潔でわかりやすく誰が読んでも同じ意味になるような文章であれば、内容や対策についても短時間で正確に理解することができます。
ヒヤリハット報告書を作成する際は、書きたい内容を取捨選択し、必要な情報だけを記載することが大切です。内容の記載には、状況がより明確になるように5W2Hを意識すると良いでしょう。
ありのままの事実を元にする
報告書の内容には、記入者の個人的な考えや意見が入り込まないようにするのが鉄則です。実際には車いすの座りが浅くて滑り落ちたのに、「立ち上がろうとした際に転んだ」と断定して記入してしまい、本来の原因と関係のない対策を立ててしまっては、事故の防止に繋がりません。
転倒しそうになっていた場合は、その時の状況のみを記載するか、「立ち上がった際に転びそうになったと思われる」など、推論であることがわかる書き方をするようにしましょう。
しっかり話せる利用者様であれば、何をしようとしていたのかをご本人に直接尋ね、返答の内容も必ず記載しておく必要があります。
専門用語は使わない
ヒヤリハット報告は職員だけが見るものではなく、ご家族様に求められた場合開示する必要があります。そのため、専門用語の使用は控えるべきです。職員同士であっても、新人職員にはわからないような専門用語が並んでいると、内容の理解に時間がかかったり、意味を誤解されてしまうこともあります。そのため、専門知識を持たない人でもわかるような書き方が望ましいとされています。
特に、施設内独自の略語は使わないようにしましょう。普段職員同士で使っている略語でも、異なった意味で伝わってしまうことを避けるために、略語は使わず、正しい表記を心掛けましょう。
必ず対策をとる
ヒヤリハット報告は、事故を未然に防ぐことが目的ですので、対策の記載が必須です。もしもその対策が事故の防止につながらなかったとしたら、上手くいかなかった理由を考えて、再度対策を立てることが大切です。事故をゼロにすることは決して容易なことではありません。しかし、ヒヤリハットの対策でPDCAサイクルを回し続けていれば、少しずつでも事故は減少していくことでしょう。あきらめずに続けることで、事故やヒヤリハットを多角的に捉えることができ、職員のリスク管理能力の向上につながります。必ず対策をとり、施設全体の安全性を高めていきましょう。
まとめ
ヒヤリハットは、将来起こるかもしれない事故について、職員に知らせる役割を持ちます。ヒヤリハットの時点で対策をとることで、事故を未然に防ぎ、利用者様の安全を確保するとともに、職員の安全性への意識を高め、リスク管理能力を向上させることにもつながります。利用者様の安全や職員の資質向上のために、この記事が皆様にとって参考になれば幸いです。
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白ゆり介護メディア編集部
いかに白ゆりの魅力を伝えるかを常日頃考えている介護メディア担当です。
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